「わぁ、すごい…どうしたんですか?この薔薇」

「庭の手入れをしていたら、よくご挨拶をしている方から頂きまして」

「庭の手入れをしているだけで、こういうの貰えちゃうのって…すごいね」

「そんなことありませんよ」

そういいながら、ユキは新聞紙の上に広げた薔薇の茎から、丁寧に棘をとっていた。

「っていうか、そんなのやって、指怪我したら大変じゃん」

「これぐらいなら、大丈夫ですよ」

「でも、もしもってこともあるから、ユキはこれ以上触っちゃだめ!」

「ですが…このままでは、誰かが怪我をしてしまうかもしれませんし」

「それならあたしがやる!」

「あなたが…ですか?」

「うん。だから、ユキは見てて」

「……わかりました。では、お願いしてもいいですか」

「うん!」

途中まで棘の取れた薔薇を受取り、ユキがしていたように丁寧に棘を外していく。
本数はそんなにないけれど、しっかりついてる棘を見落とさないよう取っていくとなると結構神経を使う作業だ。

「最後の1本ですね」

「はぁ〜…結構神経使いますねぇ」

「それが終わったら、お茶をおいれしますね」

「はーい」

元気良く返事をした瞬間、手のひらにかすかな痛みを感じた。

「っ…」

さん?」

「…あちゃー…やっちゃった」

取った…と思った棘が、中途半端に残っており、手のひらを軽く引っかいてしまったようだ。
血は出ていないけれど、赤い筋が手のひらに走っている。

「どうしたんですか?」

「あ、いえ…取ったと思ったのが、ちゃんと取れてなかったみたいで…」

苦笑しつつ、手のひらをユキの方へ見せると、男性にしては細い手があたしの手をそっと掴んだ。

「…あぁ、本当だ。ですが、掠っただけ…のようですね」

「はい。なので、暫くすれば……っ?!

驚くあたしの前で、ユキが手のひらに軽く唇を寄せた。
い、いやいや、違う…どっちかというと、触れたっていうのが正しいかもしれない。

「あ、あの…あのっ…」

「…え………あ、あぁ、す、すいません」

慌てた様子であたしの手を離したユキの顔は、あたし以上に真っ赤になっていた。

「つい…咄嗟に、傷口に触れてしまいました。す、すみません…」

「い、いえ……」

「その、い、今…お茶をいれてきますね。ついでに、救急箱も持ってきます」

「は、はい…おねがい、し、ます」

千秋や蓬生とは違う。
多分、手のひらに触れたのが二人だったら、こんなにドキドキしなかっただろう。
でも何故か…今のあたしは、ユキが触れた手のひらを、ただただじっと見つめてしまうだけだった。










「なぁ、八木沢くんの唾液は消毒液なんやろか」

「ユキの奴もやることは蓬生と変わらないな」

「……なんや千秋、顔のニキビが傷になっとるな」

「寄るな、近づくな、触れんな!八つ当たりはやめろ!





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弟妹がいるし、手のかかる新もいる。
だとしたら、怪我したら、ついそこを舐めるとか(おい)
痛いの痛いの、飛んでけー…とか(おい)
そんぐらい、やりそうなイメージがユキにはあるのです…私。
でもさすがに、べろっ…とかはやらないかなぁ(苦笑)
舐めときゃ治る的な台詞言う前に、救急箱持ってきそうだもんね、ユキ(苦笑)
ちなみに蓬生は怪我したら舐めるタイプです(そんな断言いらん(笑))